ポリフォニー例 | J.S.Bach:インベンションBWV772-1から | (57KB) |
ホモフォニー例 | W.A.Mozart:ソナタK545から | (72KB) |
ハイドンと対照的に短い一生の間で華々しく才能を発揮した神童、W.A.モーツァルト(1756-91)。彼は少年時代シュペート製のピアノを父親から与えられましたが、 性能が思わしくなく、チェンバロのほうを愛用していました。しかし1777年の演奏旅行でウィーンのシュタインが作ったピアノに 出会い、その優れた性能に感激。以後彼のピアノ曲はチェンバロ的な色彩を弱め、著しくピアノ的になってきます。
モーツァルトは多くのピアノソナタ、変奏曲、コンチェルトを作曲しました。
特に18Cにあまり発達しなかった変奏曲は、彼によって芸術的に洗練され高められました。
彼の後期の変奏曲はそれまでの”旋律が装飾されていく”形式から”和声構造のみ残し、
もとの旋律は新しい旋律におきかえる”という形式に発展しています。
彼の曲に親しみやすいのは、その旋律の思いつきが優れているところにあります。
その旋律は一つの動きが次の動きをよびおこし、真の生気とバランスを感じさせるのです。
このシュタインのピアノはハイドンもベートーヴェンも愛用したといわれる名器でした。このピアノの特徴は
ウィーン式アクションの採用により、反応が早く音にむらがないこと、膝ペダル式ダンパー(消音)機構が効果的に働くことにありました。
音域は5オクターブにまで広がっています。
ただしキイの重さは現代の半分位でハンマーも小さく、そのため音量もさほどなかったものの、軽快なタッチの演奏にはとても適していました。
弦は高音部がスチール製で、低音部は巻線でないため、音色は透明でクリア。
一方ワルター製のピアノは鍵盤のしずみが浅く、歌うような
メロディーもペダルなしで弾けました。
ハイドン、モーツァルトの作品にあふれている楽しい生命感と躍動感、そして美しい旋律はこれらのピアノがあったからこそ生み出されたといっても過言ではないでしょう。
ピアノは歌う鍵盤楽器なのです。