bellハイドン、モーツァルト頃のピアノ

K.P.E.バッハに直接影響を受けた作曲家はJ.ハイドン(1732-1809)です。彼のピアノソナタ(チェンバロとピアノ共用)の特徴は、 節度のある表現と無理のない音型、洗練されたホモフォニー様式であるということ。 また一つの楽章(だいたい第1楽章)にいつもソナタ形式を取り入れ、ソナタ形式の規範を築きました。

ボタン ポリフォニーからホモフォニーへ
ポリフォニーとは一つ一つが独立したた多声からなる音楽。技法的には対位法が代表的。
ホモフォニーとは例えば主声部の旋律に簡単な伴奏をつけた技法のようなものをさします。

ポリフォニー例 J.S.Bach:インベンションBWV772-1から クリックすると音が聞けます (57KB)
ホモフォニー例 W.A.Mozart:ソナタK545から クリックすると音が聞けます (72KB)

ボタン ソナタとソナタ形式の違いは?
「ソナタ」とはいくつかの異なる性格の楽章(多くは3−4楽章)からなる曲。
例:アレグロ−アダージョ−スケルツォ−プレスト
「ソナタ形式」とは一つの楽章が提示部→展開部→再現部の3部からなる形式のことをいいます。


18C前半のピアノは木製の箱に真鍮や鉄の弦を張り、鹿皮を貼った木のハンマーで打弦する方式で、 音域も4オクターブ−4オクターブ半しかありませんでした。

W.A.Mozart銅版画 ハイドンと対照的に短い一生の間で華々しく才能を発揮した神童、W.A.モーツァルト(1756-91)。彼は少年時代シュペート製のピアノを父親から与えられましたが、 性能が思わしくなく、チェンバロのほうを愛用していました。しかし1777年の演奏旅行でウィーンのシュタインが作ったピアノに 出会い、その優れた性能に感激。以後彼のピアノ曲はチェンバロ的な色彩を弱め、著しくピアノ的になってきます。

W.A.Mozart肖像画 モーツァルトは多くのピアノソナタ、変奏曲、コンチェルトを作曲しました。
特に18Cにあまり発達しなかった変奏曲は、彼によって芸術的に洗練され高められました。
彼の後期の変奏曲はそれまでの”旋律が装飾されていく”形式から”和声構造のみ残し、 もとの旋律は新しい旋律におきかえる”という形式に発展しています。

彼の曲に親しみやすいのは、その旋律の思いつきが優れているところにあります。
その旋律は一つの動きが次の動きをよびおこし、真の生気とバランスを感じさせるのです。

シュタインのアクション このシュタインのピアノはハイドンもベートーヴェンも愛用したといわれる名器でした。このピアノの特徴は ウィーン式アクションの採用により、反応が早く音にむらがないこと、膝ペダル式ダンパー(消音)機構が効果的に働くことにありました。 音域は5オクターブにまで広がっています。 ただしキイの重さは現代の半分位でハンマーも小さく、そのため音量もさほどなかったものの、軽快なタッチの演奏にはとても適していました。 弦は高音部がスチール製で、低音部は巻線でないため、音色は透明でクリア。
一方ワルター製のピアノは鍵盤のしずみが浅く、歌うような メロディーもペダルなしで弾けました。

ハイドン、モーツァルトの作品にあふれている楽しい生命感と躍動感、そして美しい旋律はこれらのピアノがあったからこそ生み出されたといっても過言ではないでしょう。
ピアノは歌う鍵盤楽器なのです。

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