かつて音楽(クラシックと呼ばれる類の)は少数の王侯貴族のもで のでした。しかしフランス革命(1789-99)をへて市民社会が成立すると、 音楽も一般大衆のものとして広がっていきました。
ベートーヴェン以前には作曲家が自作を鍵盤楽器で演奏するのが普通でしたが、 19Cには職業的なピアニストが登場し、ホールに大勢の聴衆を集めてコンサートを開くようになったのです。
また中流家庭のあいだにもピアノは普及していきました。それはキイを押せばすぐに音が出る便利な楽器で ピアノ曲はもちろんのこと、歌曲やオーケストラのために書かれたものまでもを(ピアノ用にアレンジして)楽しもうという気運が高まってきたからです。
このようにピアノが万能楽器になり得たのは、なんといっても音量が豊かになり、強弱のニュアンスが自在に出せ、音域も広がったためでした。
また当時各地で勢いを増した産業革命が工業技術の発展をうながし、それによって大きなフレームなどの鋳造技術が可能になったこと、さらに
一般の需要に応えるだけの量産も可能になったこともピアノ普及に大きな影響を与えています。
こうして19Cまでに飛躍的な進歩をとげたピアノですが、20Cに入ってから現在までは部分的な改良にとどまっています。 大会場にふさわしい音量が出せるように、キイの寸法が長くなり、沈み具合も深くなり、音域面でも88鍵が標準となりました。